こんにちは! 占いワールド事務局スタッフ・占部めい&卜部まいです。 今回の占いコラムは、ウェブサイトでの星占いが大人気、最近では星占いの手帳や書籍も次々と出版され、講師としてもご活躍中の石井ゆかりさんの登場です! インタビュー前編では、星占いに出合ったきっかけから、主宰する星占いWebサイト「筋トレ」のことまで、たっぷり語っていただきました。
【プロフィール】 星占いWebサイト「筋トレ」主宰。 独学で星占いを修得、2000年よりインターネットで個人鑑定を開始。その後、自サイトに毎週の12星座占いを掲載し、人気を集める。現在は雑誌や携帯コンテンツなども執筆するなど、活動の場を広げている。
自分では「占いの道」には入ってないつもりでいるんですが…。「占い師ではないです」とずっと言い続けているので、いまだに「占い師」と名乗ったことはないです。 占いをやってるというと、みなさん学生のころから教室の片隅で友達を占ってた…というイメージを持つらしいんですが、まったくそんなことはなくて、興味もなかったんです。 きっかけといえば、23歳の時に辛いことがワーっと重なっちゃったことですね。大学を卒業できなくて、それがわかったのが卒業式の日でした。卒業できると思ってたんで、就職先も決まっていました。就職先が「働きに来てもいいよ」といってくれたので、卒業しないまま出社してたんですが、そこがカルトみたいなヘンな会社で…。入社2週間くらいで、走って逃げました。 しかも、その時、4〜5年付き合っていた彼氏がいたんですが、「他に好きな女ができた」と言ってフラれたんです。で、彼が好きになった女の人が「星占いができる」と言うんですよ。それを聞いて、「星占いができるって、どういうことだ!」とか思っちゃって。でも、そこで「星占い」っていうのは何かルールがあって、勉強さえすればできるものなんだと知ったんです。それで、なんとなく星占いの本を買って、やってみたらおもしろかった。それが始まりですね。その後、知り合いを「フフン♪」と楽しく占って遊んでたんですが、占いの道に行こうとは思わなかったですね。
5年で大学を卒業し、IT関連の会社に就職して、ウェブのプログラマーをやっていました。そこで、インターネットとはこういうものだとか、サイトのつくり方とかをひと通りマスターしたのですが、すっごく忙しくて。上司が倒れたり、私も身体を壊して、一年半くらいで辞めたんです。それで、たまたまうちにパソコンがあって、仕事も辞めて暇だからHPでも作ろうかな、と思ったときに、「インターネットで人が見に来てくれるのはどんなコンテンツだろう・・・そういえば、星占いやったことがある!」と思いつきました。そこで、「無料で個人のホロスコープをメールで占います」といって始めたのが『筋トレ』だったんです。 もともと『筋トレ』は星占いだけのサイトにするつもりはなくて、いろんなものが入ったサイトにしようと思ってたんです。例えば、お菓子のパッケージの裏にヘンなキャラや説明が書いてあったりするじゃないですか。おかきの袋の裏を見ると、製造元の住所欄に“おかき村”とかまじめくさって書かれていたり。そういうのが好きだったのと、もともと文章を書くのがすごく好きだったので、いろんな商品の説明書きを集めたページとかをつくったんです。 当初の『筋トレ』でそういうのをやっていたら、そのうち他のサイトさんから「占いの記事をかかないか」とかオファーがあったりして、それを軽い気持ちで引き受けてたら、いつの間にかこうなっちゃたんですね。「占いを志そう!」というつもりはまったくなくて、常に「占い」をやってる自分に疑問や違和感を持ちながら、今もウロウロしているという感じなんです。
カルチャーセンターで講座をやる時に、講師だから当然「先生」って呼ばれるんですが、すごくイヤなんです。「先生」って呼ばれると、「やめてください! 『石井さん』とか『ゆかりさん』でお願いします!」って、わざわざ訂正してます(笑)。普段は「ライターです」と名乗っています。
いや…本当は弟子入りするものだということすら知らなくて。「占い」はただ、本を読んで遊ぶものじゃないかと思うんです。たとえば、トランプの“七並べ”を誰も学校で習わないじゃないですか。それと同じ感覚です。 私の商売意識は「書き物をする」ということなんです。「ライターです」って名乗るのも、そこからきています。「文章を書いて食べて生きたい」っていう気持ちはずっとあったんで、その延長線上に「占い」があるだけなんです。
私は「引きこもり」な方で、人付き合いとかあまりしないし、友達もいないんです。普通の人は、学生時代に友達づきあいや恋をして、悩んだり苦しんだりしながら人間関係を学ぶじゃないですか。私はそういう、人間としての修行をあまりしなかったので、「どうしよう、これでは文章を書くのにまるっきりネタがないじゃないか!」と思ったときに、「そうだ、占いならみんな悩みを話してくれるし、自分もそこで真剣に悩んだり迷ったりして、ちょうど人間としての訓練ができて、よろしいではないか!」と思って、『筋トレ』と名づけました。
「筋トレ・週報」ですね。これは大昔にインターネット博覧会(インパク)というネットの企画があって、それに参加していた毎日新聞社が女性向けの「えるぱーく」というコミュニティ・ポータルを始めたんです。「そこで占いを書きませんか?」と誘われて、週運を書いたのがきっかけです。ここでは、ものすごい量の占い原稿を書いていて、それはそれは大変でした。 そして、「インパク」終了後、「えるぱーく」も終了することになったんです。週運の連載もそこで止めちゃってもよかったんですが、もったいないと思ったので、『筋トレ』で引き取りました。ここで、「筋トレ・週報」という読み物の形ができあがって、だんだん人が見に来てくれるようになりました。
そうですね。最初が「無料で個人占いします」っていうスタートだったんで、オファーはすごく多かったです。常に「待ち」が発生しちゃって。ものすごく待って頂いたあげくに長文のメールを書くっていうのをやっていたんですが、あるとき、いっぱいいっぱいになっちゃって。 でも、無料から有料に移行するのはすごく難しくて…自分でも着地点がわからない感じでした。それまでタダだったのに「なぜそうしてもいいのか」という説明がつかないんですね。 最初は振替口座をひとつ開いて、「いくらでもいいから入れてください」ってカンパ制にしたんですね。その後、カンパ制でも金額を決めて有料という形に移行しました。 個人鑑定は、最初の頃と形こそ変わっていますが、基本的に今も止めてはいないんです。今は「ほしゆびわ」(※1)という形で、指輪の石を決めるときに長い文章の占いを書くということを続けています。私は書物だけで占星術を独学して、師匠もいないので、他に味方になってくれることといえば「実践」しかないんですね。個人をたくさん占うことで説得力が出るだろう、という気持ちがあります。 文献をすごく研究してやるタイプの占い師さんは違うかもしれないんですが、私は「ホロスコープを書いてお話する」という経験を積まないと、何を言っても宙に浮いてしまうような気がします。
そうですね。それには2つ理由があると思います。発信するということにどう厚みを持たせるか、という信頼性の問題と、あとは実験的な興味です。本にはこう書いてあるけど、実際はどうなんだろうとか。 実際の人たちに語りかけると、非常におもしろいものが出てくる。たとえば、山羊座に金星がある男性が、具体的にはどういうタイプの女性に惹かれるのというと、「襟のある服装の女性が好きなんだよね」とか言うので「なるほど!」と。で、射手座に金星がある男性に聞くと、「女性のカーディガン姿が好きなんだよね」って(笑)。「そうか、ダブルボディーズ・サイン(※2)だからかー。何かと組み合わせて着るからだー!」とか。象徴とピッタリ出てくるものがあると、とてもおもしろいですね。「そう出るか!」と思うんですが、そのことは占いの参考書を読んでもわからないことなので、実際に人から聞くのが、おもしろいですね。
「えるぱーく」時代に、「こういう理由で星の動きを読んでるのに、伝えられない!」とうっぷんが溜まっていたので、そのはけ口として『筋トレ』に星の動きを書いたのが最初です。 『筋トレ』の人気と信頼感は何かと言えば、「今週の星の動き」の部分じゃないかなと思います。「12星座分け」と「今週の星の動き」が両方あるということで、私は納得して書いているんです。 霊感とか、神秘な力がないと「占い」はできない、と思っている方が多いと思うんですが、私はそういう力みたいなものは、まったくないんです。むしろ、家族旅行の宿で、みんな「何かいる!」と言ってるのに、私だけ何も感じなかったりとか(笑)。「今週の星の動き」を読んでいただければ、そういう力がなくても星占いはできるんですよ、ということがわかるんじゃないかな。
調子がいい時は1時間、2時間で書けちゃうんですが、調子が悪いと朝からダラダラして…。書けないときは書けないし、いろいろですね。 今は携帯サイトでも掲載されているので締め切りがあって、夕方の5時までに書かないといけないのが戦々恐々なんですが。 休んだのは…1、2回くらいかな? みんな待ってるわけじゃないですか。私が書かせていただいて、読み手はディスプレイの向こうにいて見えないけれど、協力や応援というか、「一緒に書いてるんだ」という気持ちです。 編集者は物書きのタイムキープをしますよね。それと同じで、「筋トレ週報」を待っくださっている読み手のみなさんがスケジュール管理をしてくれて、私が書いている、そんな感じです。
私が“語りかけ口調”で書いているので、みなさんは友達みたいな親近感を持ってくださってるようです。本当の友達みたいなメールくださる方もいますよ。「今日はこんな日で…」って報告があったりして(笑)。 占いの文章ってホント奇妙です。こんな文章は世の中に他にないと思うんですが、「あなたは…」って書くんですよね。会ったこともない人に「あなたは…」って呼びかける奇妙さっていうのは、自分でやっていてもどうも、ときどきとまどいがあります。 今度、『12星座』という本を出したんですが、ここでは性格占いじゃなくて、12星座の仕組みのようなものを書きたかったんです。そこで、“です・ます調”じゃなくてもいいじゃないかと思って、「“だ・である調”で書こう!」って、担当の編集者とも盛り上がったんです。でも、うまくいかないんですよね。「そこに人がいるんだ」っていうのを意識して書かないと、破綻しちゃうんです。何回も書き直して、「やっぱり語尾がダメなんだよ…」って編集者と話をして、途中まで書いたけれど書き直しました。辛かったですね。
「幸運だっていわれてたけど、違うじゃないですか!」っていう人がいるんですよ。みなさんのお話を聞いていると、木星が来る時期は大変なことが起こるんだって思います。でも、その後起こることを考えてみると、その時期に「ガン!」って大きな出来事を経験しないとダメだったんだなって。リアルタイムではイヤかもしれないけれど、起こるべくして起こるというか。そういうのは、お話をうかがっていかないと分からないですよね。実際何があったのかということを。
確かに、木星が来た時は大変でしたね。でもリアルタイムだと「こんなもんかな?」とか「どうしよう」と思うばっかりで、あまり「辛い」とは思わないんです。なので、「いま苦しいんです」って言ってくださる方がいらっしゃると、苦しみをリアルタイムで味わえる人っていうのは、むしろ強いんだろうなと思います。私は多分、麻酔みたいなのを自分で打って感覚を麻痺させたり、違うことを考えて痛みから逃げるんです。「彼氏と別れて、辛くて家から出られない」という人がいると、「強いなー」と思います。「私だったらそんなに悲しめない、怖いもん!」と思うんです。
ちょっと情けないような書き込みをする方もたまにいて、それに対して怒りを感じる人もいるんです。でも逆に、私は「そこまで弱音を吐けるのはたいしたもんだな!」と思います。情けない書き込みに対して、「甘えるな!」という書き込みがあったりするんですが、「でも、ウチのサイトは甘えるところなんだ!」って、一回ピシャッと言ったこともあります。 ある程度セキュリティには配慮していますが、基本的に掲示板も開放しているし、メールアドレスも公開しているので、私のサイトはとてもオープンだと言われています。トラブルも多いでしょう、とご心配頂くこともあるんですが、不思議といやな思いってあまりしたことがないんです。それがなぜなのかは、私にも良く分からないんですが、みなさんすごく積極的かつ誠実で、理性的でいらっしゃるっていうのは幸せだと思います。
実に、無防備なサイトですね。私のメーラーには常にスパムメールが毎日何百通も来るんですが、あえて公開しているっていうのは、やっぱりみなさんが参加してくださるってことを閉じたくないから、っていうのがあります。それがないと、私のやっていることはやっぱり何の説得力がないんです。霊感もないし、誰かすごい先生についたとかの権威もないし、神秘体験もないし、すごく書物を研究しているというわけでもない。ただひたすら、日常的にみなさんが「こういうことがありました」って報告してくれるのを受け取ったり、一緒に悩ませて頂いたりしながらできあがった、それがうちのサイトです。すっごくありがたいと思っています。今はあまり掲示板にも顔を出せていないし、日記のコメントにもレスができないし、メールも半分くらいしかお返事できないので、ほんとに心苦しいというか、焦りのようなモノを感じています。
石井ゆかりさんの近著・発売中! 『12星座』 1,680円 (WAVE出版)
※1 ほしゆびわ ゆかりさんプロデュースの指輪シリーズ。お客様の出生チャートをもとに石を選び、ホロスコープについてのメッセージが付く。
※2 ダブルボディーズ・サイン 2つ以上のことを同時にこなしたり組み合わせたりする傾向が強いとされる柔軟宮の星座(双子座・乙女座・射手座・魚座)。
※3 射手座の耕運期(=幸運期) 2007年は「幸運の星」と呼ばれる木星が射手座を運行し、一般的な星占いでは「木星は12年に一度のラッキーイヤー」と表現されていた。
より詳しい解説は用語集をご覧ください。