こんにちは! 占いワールド事務局スタッフ・占部めい&卜部まいです。 占いコラムは前回に引き続き、石井ゆかりさんの登場です! ウェブサイトでの星占いが大人気、最近では星占いの手帳や書籍も次々と出版され、講師としてもご活躍中の、大注目の星占いライターさんです。 インタビュー後編では、星占いとの関わり方から、今後の展望までを、たっぷり語っていただきました。
【プロフィール】 星占いWebサイト「筋トレ」主宰。 独学で星占いを修得、2000年よりインターネットで個人鑑定を開始。その後、自サイトに毎週の12星座占いを掲載し、人気を集める。現在は雑誌や携帯コンテンツなども執筆するなど、活動の場を広げている。
占星術は統計学であると思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、私はそうは思いません。それはつまり、「この星回りのときは、こういうことがある」と星占い師たちが考えたり、経験を積み重ねて出来たデータベースがあるということです。「これをどう読めばいいでしょう?」っていう方は、何か辞書的な読み方があるとイメージされているかもしれませんが、そうではなくて、星占いは、単純にユングの言うアーキタイプ、人間心理の原型(※1)をマンダラにしたみたいな体系だと思ってるんです。 抽象的な象徴を組み合わせているだけなんで、その体系さえわかっていれば、そこには言葉がちゃんとあるので、「自分には読めない」ってことはないんです。そこから何をイメージして何を書くかって言うと、やはり人生経験が必要だと思うんですが。 わからないとすれば、「具体的にどうなるか」ということですね。「この星とこの星の組み合わせで、こういう象徴が出てくる」っていうのは絶対にわかります。ただし、具体的にそれが嬉しいこととして出るか、嫌なこととして出るかは、まったくわからないです。 たとえば、結婚と離婚は似たような星の形で出てくるのを見たことがあります。じゃあ、星占いはデタラメかというと、そうではないんです。結婚を通して愛を学ぶ人と、離婚を通して愛を学ぶ人がいて、そこに起こってくるのは「愛を学ぶ」という抽象的なこと。その星回りで結婚か離婚か、具体的になにが起こるかわからないんですが、そこであなたは「愛を学ぶ」ということは分かります。 携帯電話は星占いができた頃にはなかったけれども、じゃあそれは何かって考えた時に、天王星や水瓶座に入ってくるだろう、水星もからんでいるだろう、と言えるのは、星占いの象徴の体系というものが、非常に堅牢に出来ているからだろうと思います。
そうですね…これは非常に難しいんですが、私は「占い」っていうのは、本来人間が自分の人生を生きていく上で、あってはならないものだと思っています。 自分の目の前にある出来事や人を、自分の目で見なきゃいけないし、頭で考えなければいけない。だから、「占い」は、本当は使っちゃいけないし、不要なものだと思っています。 たとえば、これから起こることが、数学の練習問題みたいなものだったとすると、間違ってもいいから自分で答えを出してみて、答案を合わせて、合ってた、間違ってた、解き方はこうやるんだ、と自分で考えていってはじめて、その問題が身に付くんだと思うんです。その考えからいくと、「占い」は練習問題の答えを先に見るようなものです。それは、何の足しにもならない。 私は自分が「占い」をやってるということが非常にイヤですし、問題を感じています。「占い」はなければないでいいし、基本的には悪いことだと思っています。 じゃあ、なぜやるのかというと、人間は非常に弱いモノだと思うんです。世の中全体を見たときに、どうしても「弱さ」というものが役に立つというか、意味を持っている。どうしようもなく「ある」んですね。弱いからこそ、生まれてくるいいものもあります。みんなに完全に強くなれということはできないし、弱い人がいて、「占い」が求められるというのは、あるべきではないけれど、どうしようもなく世の中にあってしまうものだからなんじゃないでしょうか。 「占い」が当たるなんて、立証も検証もされていないじゃないですか。そんなものを「来週こうなるでしょう」なんて声高に語ることの恥ずかしさ、情けなさ、申し訳なさ。それはいつも言ってることです。でも、私も含めて、人は悲しいくらい弱いんですね。「占い」は、見えないもの、見えない未来、見えない人の気持ちに翻弄された時につかむワラのようなもの。アルコールやタバコと同じです。元気に生きていくためには、そんなものないほうがいいんです。 タバコとかアルコールとかパッケージには「あなたの健康を害する怖れがあります」って書いてある。私も「占い」にそう貼りたいくらいです。実際、今度出した本の前書きには、「お医者さんとか、自分の仕事に誇りをもって生きている人と比べたら、私はなんて卑怯な仕事をしているんだろう」ということを書いてます。たとえば、芸術は、いい形のものだと思います。インスパイアして、考えさせて、人を奮い立たせることができる。「占い」はその点、人を信じさせちゃうし、「あなたはこうですよ」なんて言っちゃうし、傲慢で、何の裏づけもないものです。依存する人もいるし、未来は決まっているものだと思っちゃう人もいますし。 お酒を飲むと、アルコール中毒になったり、肝臓を悪くしたりします。一切アルコールを飲まない人もいるわけです。だったら、飲めない方がいいんだけれど、どうしようもなくて、お酒に頼っちゃう。それで次の日、「ま、いっか」となる。「占い」も、そんなくらいのものです。 だから、私は酒やタバコを売る人間と同じように、占いも、「害がありますよ」って言いながらやらないといけないって思うんです。私の立場では、口が裂けても「占いをうまく使えば、あなたのためになりますよ」とか、「星の神秘のエネルギーがあなたを癒します」とか絶対言っちゃいけない。受け取る人が自分で「占いも使いようだよね」と思うのはいいんですが、私は「占いなんて使うと、自分で考える力が弱まりますよ」って言わないといけないと思っています。それを、「無責任だ。もっと自分の言うことに責任をもって堂々とやれ」と言う方もいますが、私の責任の持ち方は、できるだけ情報開示をしていくことなんです。
「半信半疑で」ってことはないし…難しいですね。その方によると思います。でも、私が言えることは、さっき言ったことそのまま、「占いなんて、なければないほうがいい」ということですね。 ただ、私もホラリー(※2)を見ることもあれば、タロットを引いちゃったこともあります(笑)。いつもすごく星の動きを意識しているわけではないんですが、「あれ、なんかおかしいな」って思う時は、面白半分で「見てやれー」っていうことはあります。
基本的には、「石井NP日記」(※3)を書いている時がいちばん幸せなんですけど…好きな活動のベースは主に「書き言葉」ですね。私は文章を書くのが商売なんだろうと思います。講演は楽しいですが、講演を商売にするプロとは違うなって思います。そういう意味では、対面占いも、すごくおもしろいんですが、私はプロの方とは違うなって思います。
今、「占いを書き過ぎてるな」と思ってまして。月間2本、毎週2本ずつとか書いて、寄せ集めるとすごいボリュームです。占い以外の勉強ができなくなってるんで、占いは置いといて、もっといろんなことを勉強したいなって思っています。 占いばかりしていて、「占い頭」になっちゃうのがすごくイヤなんです。そうなると占い自体も、おもしろくなくなる。深みがなくなりますし、洞察も浅くなるような気がします。占い以外のことをどれだけ掘り下げて考えているか、が、占いの品質というか、内容の良さを左右すると私は思います。占いばっかりやっていると、何でも12星座で捉えようとしちゃうし、ホロスコープを前にして人と話していると、やっぱり「当ててあげないと」って思うわけで、その人の話をちゃんと聞かずに素通りしている感じがします。目の前にその人がいるのに、その人の顔を中途半端にしか見られない。それは「人としてどうよ?」とか、「筋違いじゃないの?」と思うことがあって。そうなっちゃったら、多分、「占い」でおもしろいものを書けないだろうと思うんですね。だから、ちょっと「占い」から頭を少し切り離して、人と会ったり、あるいは勉強したり、ってことを、もうちょっとやらなきゃって思います。 ジャンルは特に絞ってないんですが、今は人と会って文書を書くという活動をしています。インタビューは難しいですが、ひたすら話を聞くのは無茶苦茶おもしろいですね。だから、これをもうちょっと突き詰めてやりたいという気持ちはあります。どういう形にできるかはわからないんですけれども。 普通インタビューでは、「この人はこういう風に素晴らしいよ」と紹介しますよね。でも、私がやりたいことは、その人の“全体”を描くのではなく、その人が持っているいろんな経験の中で“おもしろいもの”を私が咀嚼して、何かの形にして、「こういうテーマって、どうかなあ」と問いかけるようなことをやりたいなって思います。 もともと私は小説家になりたかったんですけど、たったいま、小説を書きたいかと自問すると、どうも、そうではないんです。それは「占い」をずっとやってきて、『筋トレ』という場がすごくおもしろかったからなんです。人がいっぱいやってきて話をしたり、オファーをいただいて新しい企画が出来たり。そういうおもしろい世界の中で、基本的には文章に軸を置いてやりたいです。小説は頭の中の世界を考えたことを芸術作品のような形にすることだと思うんですが、私はもうちょっとインタラクティブなことをやりたい。ただ、私はものすごく主観的な人間なので、取材をしてニュースを書くというような客観的なことはできないんです。主観は主観なんだけれど、インタラクションがあって、窓を開けたようなところで自分が「いいな」と思ったことが文章で出来てくる。それが今の私の表現方法なのかなと思っています。
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石井ゆかりさんの近著・発売中! 『12星座』 1,680円 (WAVE出版)
※1 ユングの言うアーキタイプ、人間心理の原型 すべての人が無意識の中に持っている固有の要素であり、それが様々な形になって夢の中に現われるとされています。アーキタイプには、シャドウ、アニマ、アニムス、オールド・ワイズ・マン、グレートマザーの5つがある。
※2 ホラリー ホロスコープを用いた占術で、ト術の一つ。ホラリーとは「その時間において」という意味。相談した瞬間のチャートを使って判断していく。
※3 石井NP日記 石井ゆかりさんのブログ。
より詳しい解説は用語集をご覧ください。